スペンサー・ジョンソン著『チーズはどこへ消えた?』~変化を恐れないということ

趣味で速読講師の資格を取るくらい読書好きで、最近は読書量もずいぶん増えました。

今回は2000年に出版されて大ベストセラーとなった『チーズはどこへ消えた?』を読みました。
この本、全世界で累計2800万部も読まれているそうです。

日本では野球選手の大谷翔平選手の愛読書という意味でも注目されました。

ビジネス書として読まれていることが多いようですが、内容は人生の教訓と言ってもいいかもしれません。
読みやすく、ビジネス書にしてはかなり薄い、94ページの本。
児童書のように軽く読めますが、大切なことがギュッと詰まった一冊でした。

 

目次

スペンサー・ジョンソンって何者?

著者のスペンサー・ジョンソン(Spencer Johnson)はアメリカの医学博士であり心理学者でもあります。
心臓のピースメーカーの開発に携わっていたり、心理学分野の著書やビジネス書も多数執筆されています。

『チーズどこへ消えた?』は1999年度全米ビジネス書ベストセラー第1位となった本です。
ほかの著書は『1分間マネジャー』『頂きはどこにある?』など。

医学にもビジネスにも明るい、とても聡明な人だったんですね。

残念ながら2017年に78歳で亡くなっています。

 

あらすじ

この物語の登場人物は、小人の「ヘム」と「ホー」、ネズミの「スニック」と「スカリー」です。

小人とネズミたちは、いつも迷路の中で自分たちの「特別なチーズ」を探していました。

ある日、2人と2匹はチーズ・ステーションCという場所でとてもたくさんのチーズを見つけました。

しばらくステーションCでチーズを食べる日々を過ごしていた2人と2匹ですが、ある朝いつも通りステーションCに行くとチーズが無くなっているではありませんか!

ネズミのスニックとスカリーは、チーズが無くなったことに慌てることなく、本能のままにすぐさま新しいチーズを探しに飛び出します。

小人のヘムとホーは「チーズはどこへ消えた?」「こんなことがあっていいわけない!」と大変なショックを受けて立ちつくします
その後も「またチーズが戻ってくるかもしれない」と期待をするばかりで、ステーションCにとどまり続けます。

小人の2人はしばらくステーションCで過ごしていましたが、ホーはついに新しいチーズを探すためにステーションCを離れる決意をします。

***

※「迷路」とは?
私たちにとっての家庭、会社、地域など。

※「チーズ」とは?
人生で求めるもの、幸せを感じるもの。
仕事、家族、恋人、健康、お金、など。

 

変化は誰にでも訪れる

この物語ではネズミのスニックとスカリー、小人のヘムとホーに変化が訪れました。
チーズ・ステーションCのチーズが無くなってしまうという変化です。

ですが、それぞれがとった行動は全然違うものでした。

◆ネズミのスニックとスカリーはすぐに新しいチーズを探しに飛び出します。

◆小人のホーは、しばらくその場にとどまりましたが、新しいチーズを探す決意をしてチーズ・ステーションCを離れます。

◆小人のヘムは、ホーに誘われても、頑としてチーズ・ステーションCを離れません。そこにはもうチーズが無いのに。

同じように、私たちにも突然変化が訪れることはあります。

もちろん良い変化が起こることもあります。小人やネズミたちがチーズを見つけたように。
ですが同じように、望ましくない(悪い)変化も訪れます。

望ましくない変化とは、どういうものでしょうか?
病気やケガ、会社の倒産、リストラ、離婚、家族が事故にあうなど、望まない変化になるのではないでしょうか。

そのとき、あなたはどんな行動をとりますか?

多くの人は、ヘムのような考え方や行動をするんじゃないでしょうか。

病気になったりリストラされたり、自分の望まない方向に変化があった時、「こんなことあっていいわけない!」と怒ったり落ち込んだりしていませんか?

 

落ち込んでも、憤っても、そこにはチーズはもう無い

小人のヘムとホーはチーズが無くなって、大変なショックを受けます。
2人はチーズ・ステーションCに留まり、ときには落ち込んだり、憤ったり、「なぜ無くなったのか?」と調べたりしました。

そうしている間、チーズ・ステーションCにチーズはありません。
それなのに、なぜヘムはその場にとどまったのでしょうか。

チーズを探しに出たホーがヘムのために記した言葉の中に、こんなフレーズがあります。

自分のチーズが大事であればあるほどそれにしがみつきたくなる

これ、私はすごく共感しました。

今まで苦労して手に入れたもの(仕事やお金や恋人など)が、今は手元にある。
現状にちょっぴり不満もあるけれど、これらを完全に失うのはおそろしいと思ってしまうこと、よくあります。

今の自分や、今の自分を取り巻く状況があまり良くなくても、新しいことに挑戦する(変化を起こす)のを恐れてなかなか動けません。
挑戦した結果、失敗するのがとても怖いのです。

仕事の愚痴を言いながらも、全然転職しない人っていますよね。
この人も、転職が失敗したら…と勝手に想像して、変化を恐れています。

「転職活動しても、仕事が決まらないかもしれない。もし転職できても、転職先はもっと給料が少なくて、残業はとっても多いかもしれない。
それなら、今の会社は給料は少ないし残業もあるけど、苦労してやっと入れた会社なんだ。今の会社にいるほうが安泰だ」

そんなふうに言い訳して。

 

自分はこれからどうなりたいか?

この物語に出てくる登場人物の中で、あなたは誰に近いでしょうか?

人間は手に入れたものを手放すことを嫌だと感じる生き物なので、ヘムやホーに似ているな、と思う人が多いかもしれません。

私もそうです。イベント運営などをして、どんどん動くタイプに思われがちですが、じつはとっても小心者です。
よく見知った人としか連絡を取りたくないと思ったりもします。

ただ、そんな自分で終わらないように変わろうとしてきました。
この物語の中でいうと、ゆっくりでも変化を受け入れようと努力するホーなのかもしれません。

今でも変化を受け入れること、自分で変化を起こすことは怖いです。

でも、ホーがヘムのために記した言葉を思い出すと、少しは勇気が出るかもしれません。

変わらなければ破滅することになる

私は大人になってから、持病がわかったり怪我をしたり、多くの望まない変化が訪れました。
だからこそ、途中で「自分が変わらないといけない」と気づきました。

まだ道半ばですが、これからも自分から変化を起こせる人になりたいと思っています。
私がもといた場所には、もうチーズが無いので。

あなたはこれから、どんな自分になりたいですか?

 

***

じつは、この本には続編があります。

『迷路の外には何がある?』
著者スペンサー・ジョンソンの遺作です。

 

『チーズはどこへ消えた?』のその後の物語が語られています。

ホーやヘムがどうなったか気になりますね。
読んでみたいです。